模倣犯（五） 宮部みゆき

真犯人Xは生きている―。網川は、高井は栗橋の共犯者ではなく、むしろ巻き込まれた被害者だと主張して、「栗橋主犯・高井従犯」説に拠る滋子に反論し、一躍マスコミの寵児となった。由美子はそんな網川に精神的に依存し、兄の無実を信じ共闘していたが、その希望が潰えた時、身を投げた―。真犯人は一体誰なのか?あらゆる邪悪な欲望を映し出した犯罪劇、深い余韻を残して遂に閉幕。

推理小説ではないので推理のポイントは割愛します
が、せっかくなので１～５ひっくるめた感想をば

やっと読み終わりました(笑)
３、４巻で個人的に“中だるみ”を感じて読むモチベーションが下がって
なかなか５巻に手をつけられなかったりしたのですが、
５巻は読み始めたら、ものすごい速さで読めました

特徴的なところといえば
話の視点で節ごとに変わり、
きっかけとなる第一発見者の少年（困惑、過去のトラウマ）、
孫娘を殺されたおじいさん（怒り、憎しみ）
事件のルポを書くライター（事実解明…好奇心）
デスク担当刑事（事実解明…任務）
容疑者の妹（事実解明…家族を信用）
そして犯人（欲望・欲求）など
一つの事件を様々な立場で事件が描かれていて
臨場感と共に多角的に事件を感じることができます。
内容的に『この件は要らないだろう…』というところも無きにしも非ずですが、
（↑読むモチベが下がったところ）
そういったところを除けばストーリや展開、表現などなどおもしろく
意欲的に読めました

この作品を『現代社会』と『犯罪』というテーマで考えたとき、
それは「過去に例のない犯罪がこれからきっと起こる」とか
これからの時代に起こる犯罪への関心とかでは決してなく、
犯罪を憎む気持ちを持とうということだと思います。

人と人のつながりが希薄になり、
自己中心的な考え方が強くなりつつある現代で、
ただ、頭ごなしに「人を殺めてはいけないよ」と説教するのは
もはや時代あったやり方ではないと感じるときがあります。

それに対して模倣犯には
いろんな立場の人がいるんだ、
いろんな人が悲しい思いをするんだ、と
他人の立場にたって考える思考を育むことこそが
今の時代にあった罪の意識を向上させるやり方だよと
全体を通して強く訴える力を感じることができました